下痢・便秘

抗がん剤を投与するとなぜ下痢・便秘が起こるのか。そのメカニズムや対処法を調べました。

下痢・便秘が起こる原因や発症時期

下痢のイラスト抗がん剤を投与することで起こる下痢には、大きく分けて2種類があります。1つ目は投与後すぐに現れる「早発性下痢」、2つ目は投与後24時間以降に起こる「遅発性下痢」です。

主に抗がん剤の刺激で起こるのは早発性下痢で、腸のぜんどう運動が活発になるためだと言われています。

一方で遅発性下痢は抗がん剤の副作用で白血球が減り腸管感染を起こしたり、抗がん剤が直接消化管粘膜を傷つけたりすることで起こると言われています。遅発性下痢は治療を開始してから数日にわたって症状があり、長引くことがあるので注意が必要です。

抗がん剤投与による下痢は普通の下痢とは違って短時間では回復しません。粘膜障害が原因で起きている場合は白血球も減少傾向にあり、敗血症を含めた重大な感染症を起こすことも考えられます。

便秘は抗がん剤が体の末梢神経や自律神経に作用して腸のぜんどう運動を低下させることで起こります。便秘は日常的に体験しやすい症状ですが、精神的なストレスも関与しているので、便秘になったら医師に報告をしましょう。

下痢・便秘が現れやすい抗がん剤

種別 一般名 製品名
代謝拮抗剤
  • フルオロウラシル
  • メトトレキサート
  • シタラビン
  • 5-FU、カルゾナール
  • メソトレキセート
  • キロサイド/キロサイドN
植物アルカロイド
  • イリノテカン
  • エトポシド
  • カンプト、トポテシン
  • ベプシド、ベプシドS
抗がん性抗生物質
  • ドキソルビシン
  • アドリアシン

下痢・便秘の予防法・対処法

予防法

なるべく腸管を安静させるため、普段から消化が良くて刺激の少ない食べ物をとるようにしましょう。特に繊維が豊富な食品は腸管に刺激を与えて腸蠕動を高めるため気を付けます。カリウムを多く含んでいる食品や高蛋白質の食品を選ぶなど、工夫が必要です。

便秘の場合は普段から十分な量の水分補給をします。ヨーグルトや納豆、漬物といった発酵食品もとり、腸内の善玉菌を増やしてみましょう。

対処法

一般的に下痢が起きた場合、下痢止めや整腸剤を使いますが、早発性下痢の場合は抗コリン剤が有効だと言われています。

遅発性下痢で症状が重い場合は薬剤投与だけでなく電解質や補液でコントロールします。白血球の一種である好中球が減っている場合は抗生物質の投与や免疫力を回復する薬剤を用います。

便秘の場合は腹部マッサージや消化管運動改薬で腸管を活発して便通を整えていきます。

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下痢・便秘の有害事象のグレードは?

がん患者の方によく見られる有害事象として挙げられるのが下痢や便秘などの胃腸障害です。
こうした症状が出る原因は、がんそのものによるものや、薬の副作用、放射線治療の副作用によるものなどさまざまです。治療による副作用だけでなく、がん患者の方に生じる「好ましくない症状」をまとめて有害事象とし、治療や緩和ケアなどに活かしています。

例えば、がんの疼痛管理に使われるオピオイド鎮痛剤絵は、経口投与による有害事象として便秘や嘔吐などの症状が出ると言われています。

以前,中等度から高度のがん疼痛に対し,オピオイド鎮痛薬が定時投与されている被験者を対象に,タペンタドール徐放錠(ER)に切り替え8週間経口投与した時の有効性,安全性を検討,報告した.既報では,安全性についてすべての有害事象を集計の対象としたが,本報告では,オピオイドに特徴的な有害事象について本剤との因果関係が否定できない事象(副作用)を集計の対象とし,発現率及び発現時期を,参照薬であるモルヒネ徐放性製剤(SR)と比較検討した.タペンタドールER及びモルヒネSRは各50例であり,主な副作用は,便秘(8.0%,20.0%),悪心(8.0%,14.0%),嘔吐(2.0%,24.0%),傾眠(8.0%,18.0%)で,いずれもモルヒネSRよりタペンタドールERで頻度が低かった.タペンタドールERは安全性プロファイルが良好な経口オピオイド剤として,がん疼痛の新たな治療選択肢になると考えられた.

出典: 「中等度から高度のがん疼痛に対し,他のオピオイド鎮痛薬の定時投与からタペンタドール徐放錠8週間投与に切り替えた時の安全性プロファイル─便秘,悪心,嘔吐,傾眠の検討─」Palliative Care Research,11(1),2016

下痢・便秘という2つの胃腸障害に関する有害事象のグレードを「有害事象共通用語規準 v4.0 日本語訳 JCOG版(CTCAE v4.0 - JCOG)」から見てみましょう。

下痢の有害事象のグレード

下痢の有害事象は、ベースライン(有害事象が出ていない時)と比べてどれだけ1日当たりの排便回数が増加したかなどを基準にグレードが決定されます。

グレード1では「ベースラインと比べて4回/日未満の排便回数増加」または「ベースラインと比べて人工肛門からの排泄量が軽度に増加」がみられた段階と定義されています。「ベースラインと比べて4〜6回/日の排便回数増加」もしくは「ベースラインと比べて人工肛門からの排泄量が中等度増加」した場合をグレード2、「ベースラインと比べて7回以上/日の排便回数増加」「便失禁」もしくは「入院を要する段階」「ベースラインと比べて人工肛門からの排泄量が高度に増加」、または「身の回りの日常生活動作に制限」が生じた場合をグレード3とされています。

便秘の有害事象のグレード

便秘の有害事象のグレードは、日常生活にどれだけの制限が生じているのか、症状の頻度、どんなケアが必要かによってグレードが分かれています。

「不定期または間欠的な症状」または「便軟化薬/緩下薬/食事の工夫/浣腸を不定期に使用」する場合は、グレード1。「緩下薬または浣腸の定期的使用を要する持続的症状」または「身の回り以外の日常生活動作の制限」が必要な場合はグレード2。「摘便を要する頑固な便秘」もしくは「身の回りの日常生活動作に制限がある」場合をグレード3としています。

出典: 「有害事象共通用語規準 v4.0日本語訳JCOG版 2017年9月12日版(本体及び解説ページの日本語訳と日本語訳に関する注意事項を記載したPDFファイル)」