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副作用と有害事象の違い

副作用を広い意味で説明すると「主作用ではない作用」(抗がん剤などの薬物投与による直接的作用)となり、悪い作用だけを指すものではありません。一方で「有害事象」とは、薬物投与による好ましくない反応のことを指します。

抗がん剤治療における有害事象と副作用にはどのような違いがあるのか、また1から5までの段階に分かれているグレードはそれぞれどのような状態を指すのか、詳しく解説していきます。

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抗がん剤治療における「有害事象」とは

抗がん剤治療でよく「有害事象」という言葉を耳にします。多くの方は「有害事象=副作用」と思うかもしれませんが、この2つは密接な関係にありながら、実はまったく違うものです。

有害事象とは、英語でAE(adverse event:不利なできごと)といい、「薬による治療を受けている間に発生する、あらゆる好ましくない医療上のできごと」をさします。投与された薬との因果関係の有無は問いません。

たとえば、「治療後に貧血を起こした」(関係ありそう)、「治療後に空腹感を感じた」(あるかどうか不明)、「治療後にふらついて転倒し手首を骨折した」(直接関係なさそう)といったことは、すべて等しく有害事象として扱われます。

有害事象が抗がん剤との因果関係を問わない理由

投薬によって生じた結果をすべて洗い出し、より多くの情報を集積・共有することで、重大な副作用の発生を防ぎながら、薬と有害事例の因果関係を知る手がかりを得ることにつながるため、抗がん剤との因果関係は問いません。

薬との因果関係がある、もしくは因果関係を否定できないとされた有害事象を「薬物有害反応」(ADR:adverse drug reaction)といいます。これは、わたしたちが一般的に「副作用」と呼んでいるものですが、正確には副作用ではありません。

しかし、呼び方はどうあれ、薬と有害事象との因果関係を探り当て、いかに「副作用」を起こさないようにするか、どのような支持療法を行えばよいかを、医学的に解明していくことが、臨床医学の世界で非常に重要であることは変わりません。

一見、薬とは関係ないと思われるような症状であっても、それは未知の「副作用」であるかもしれません。すべての症例をもれなく拾い上げていくことで、気づかなかった「副作用」を発見することが可能になります。

有害事象とは、薬の安全性を確保するために、どんなに小さなことでも現場の情報を蓄積・共有していこうという考えに基づいた概念なのです。

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有害事象と「グレード」とは

有害事象は、「有害事象共通用語基準」(CTCAE:Common Terminology Criteria for Adverse Events)という文書にまとめられ、臨床現場で情報が共有されています。

基準は、がん先進国といわれるアメリカの国立がん研究所(NCI:National Cancer Institute)によって策定されました。

CTCAEでは、有害事象ごとに重症度を「グレード(Grade)」で示し、1から5までの5段階で評価しています。グレード評価は、薬の減量、休薬、投与する薬の変更などの目安にもなっています。

有害事象のグレードの定義

  • Grade1:軽症/症状がない、または軽度の症状がある/臨床所見または検査所見のみ/治療を要さない
  • Grade2:中等症/最小限、局所的または非侵襲的な治療を要する/年齢相応の日常生活関連動作に支障あり
  • Grade3:重症または医学的に重大であるが、直ちに生命を脅かすことはない/入院または入院期間延長を要する/活動・動作制限/着保的日常生活動作に支障あり
  • Grade4:生命を脅かす転帰/緊急処置を要する
  • Grade5:有害事象による死亡

※生命を脅かすことのない有害事象は5段階未満のものもある

現在、アメリカでは2017年に改訂された『CTCAE v5.0』(Excel版)が公開されています。

日本語版は改訂前の『CTCAE v4.0』(PDF版)まで。翻訳を担当したJCOG(日本臨床腫瘍研究グループ)のウェブサイトからダウンロードすることができます。

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有害事象、薬物有害反応、副作用の関係

私たちは「副作用=有害なもの」というイメージをもっていると思います。さきほども、薬物有害反応(ADR)が一般社会で副作用と考えられていると述べました。

しかし、医学的な定義では、副作用は「主要な作用以外の作用」のことをさし、英語でSE(side effect:副次的な作用)といいます。

有害事象に含まれない副作用がある?

有害事象、薬物有害反応、副作用の関係
画像引用元:ファーマトリビューン「有害事象」(メディカルトリビューン社):https://ptweb.jp/article/2016/160113000725/

有害ではない副作用なんてあるのか?と疑問に思われることでしょう。実は、副作用のなかには有用なものもあるのです。

たとえば、「ジフェンヒドラミン」という薬は、アレルギー性鼻炎の治療薬や乗り物酔いの予防薬の成分として知られていますが、副作用として「眠気」があります。

眠気は副作用ですが、逆手を取れば有用な「効能」であり、これを使って睡眠改善剤のドリエルが開発されました。

また、発毛・育毛効果で知られるミノキシジル(ロゲイン、リアップ)は、高血圧を治療する血管拡張薬として活用されています。

ED(勃起不全)の治療薬であるシルデナフィル(バイアグラ)は狭心症の治療薬として開発されましたが、副作用のもつ「効能」のほうが注目され、新薬として生まれ変わりました。

臨床医学の世界では、有害事象、薬物有害反応、副作用を呼び分けていますが、薬の添付文書や行政文書は、薬物有害反応の意味で副作用という言葉を使用する例も多く、なかなかわかりにくい部分があります。

しかし、こうした呼び分けがあると知っておけば、抗がん剤に関する専門的な記事や本を読むときにも混乱せず、理解しやすいと思います。

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