ペプチドワクチン療法は、患者さんの体内で働く免疫機能を高めることでがん細胞に対抗していく、免疫療法の一種。がんの目印となる抗原・ペプチドワクチンを体内へ直接注入することで、免疫機能の働きを促し、がん細胞への攻撃力を上げていく治療法です。
体内へ入ったペプチドワクチンによって、免疫細胞のひとつである樹状細胞のがんを認知する働きが高まります。樹状細胞は、リンパ球などの異物を攻撃する役割を持つ細胞に、攻撃対象を教えるため、より標的を絞りやすくなるのです。
仕組みとしては、インフルエンザや風疹などの予防接種と同じです。
ペプチドワクチン療法と同様に、免疫細胞のひとつである樹状細胞へ働きかける治療法として、「樹状細胞ワクチン療法」があります。樹状細胞ワクチン療法は、患者の体内から樹状細胞の元を取り出して体外で培養し、がん細胞の目印をつけて再び体内へ戻すという治療法。ワクチンを培養するのに3週間ほどかかる場合もあります。
一方ペプチドワクチン療法は、がん細胞に多く存在する「がんペプチド」を注射するだけ。患者さんから細胞を取り出す必要がなく、ワクチンを培養する期間もありません。すぐに対応できる療法です。ただ免疫に期待する療法なので、免疫機能が低下している患者さんには、効率よく攻撃ができていない可能性もあります。
がんの目印となるペプチドワクチンを注射し、自己免疫力を高めるだけの治療法なので、体への負担が少ない点が最大のメリット。免疫機能が極端に落ちている場合をのぞいて、ほとんどの方が治療適用となります。
また、体内のがん細胞で、MHCという抗原分子が発現していればワクチンの効果が上がりやすくなります。MHCが出ているかどうかが治療適用の判断材料となります。
がん細胞の目印となる約10種類ほどのアミノ酸分子のペプチドを注入するペプチドワクチン療法。ペプチドをがん細胞と同じ異物とみなして攻撃するよう促します。免疫系の働きを活性化させる効果があると言われており、自分の力で回復できる療法です。
自己免疫力をアップさせることによって、自らの力でがん細胞へ対抗していく治療法なので、正常な細胞を傷つけたり機能を失うようなリスクはほとんどありません。大きな副作用は報告されていませんが、注射した部分が腫れたり、赤みが出たりといった症状が現れることがあります。