肺がんや乳がんを始め、様々ながんに使われる抗がん剤「植物アルカロイド」の特徴を解説。代表的な薬や期待できる効果、副作用について説明します。
植物アルカロイドは毒性の強い植物の作用を応用した抗がん剤です。毒性を持つ植物に含まれる成分は植物アルカロイドと称され、そのなかでも細胞の増殖を防ぐ作用をもつ植物成分が抗がん剤に使われています。
植物アルカロイドの研究が始まったのは20世紀半ば。ニチニチソウという植物の葉に含まれる成分が白血球の生成を抑制する働きが認められ、それ以来研究が進み、様々な植物アルカロイドが開発されています。
植物アルカロイドは、「微小管阻害剤」と「トポイソメラーゼ阻害剤」の2種類に分かれており、それぞれ細胞に働きかける作用が異なります。
「微小管阻害剤」は、細胞分裂で重要な働きをもつ微小管というものの働きを阻害することでがん細胞の増殖を防ぐ薬剤です。
ビンカアルカロイド系とタキサン系の2種類に分類され、ビンカアルカロイド系はニチニチソウという植物が使われ、リンパ腫や白血病の治療に用いられます。
一方、タキサン系はセイヨウイチイという植物が使われ、子宮がん、乳がん、肺がん、消化器がんなどの幅広いがん治療に導入されています。
「トポイソメラーゼ阻害剤」は、細胞分裂の過程でDNAとの結びつきを阻害する働きがあり、がん細胞そのものを死滅させる作用を持っているのが特徴です。
トポイソメラーゼ阻害剤は、肺がんをはじめ多くのがん治療に導入されています。
植物アルカロイドの代表的な薬をご紹介します。
ビンクリスチン | 小児がんで多用される薬剤のひとつ。多剤との併用で効果が増強される。 |
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ビノレルビン | 新しく開発された薬で肺がん、乳がんに効果的。副作用が比較的軽度。 |
パクリタキセル | 卵巣がんの抗がん剤としてアメリカで認可を取得。現在は世界各国で乳がん、肺がん、胃がんなど幅広いがん治療に使われている。 |
ドセタキセル | 転移性・再発性乳がんの標準治療薬。胃がん、肺がんにも使用されている抗がん剤。 |
エトポシド | 注射と内服薬があり小細胞がん、悪性リンパ腫などに使用。注射は急性白血病、精巣腫瘍、絨毛がん、膀胱がん、小児の固形がんにも使用される。 |
イリノテカン | 急性白血病に対して有効。 |
ノギテカン | 小細胞肺がんに使用。 |
微小管阻害剤の副作用は末梢神経障害が挙げられます。
特に、タキサン系薬剤は呼吸困難、血圧低下などの重い副作用が現れる可能性が高いため、ステロイドやヒスタミン剤の投与で予防を立てる必要があります。
また、トポイソメラーゼ阻害剤では骨髄抑制の副作用が強く現れます。
毒性の強い植物から作られた抗がん剤だけあり効果が高い反面、重い副作用も生じやすいといわれています。
薬によって副作用の症状はさまざまですが、軽減するための予防策が必要となります。