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トラスツズマブ

トラスツズマブの特徴や副作用、使用上の注意、使用者の体験談などをご紹介します。トラスツズマブは、乳がんや胃がんの治療に用いられている抗がん剤の一種です。

トラスツズマブの概要

一般名称 トラスツズマブ:注射
形状 注射
分類 分子標的薬
商品名(製造元) ハーセプチン注射用60、150(中外製薬株式会社)
薬価 60mg19,034円/瓶、150mg44,215円/瓶
適応する症状
  • 乳がん
  • 胃がん

トラスツズマブの特徴

トラスツズマブは、乳がんや胃がんなどの治療に用いられている抗がん剤。がん細胞の増殖に関与している特定のタンパク質を阻害し、がん細胞の拡大を抑制する薬です。 がん細胞には「HER2」と呼ばれる特殊なタンパク質が出てくることがあります。

この「HER2」が乳がんや胃がんで過剰に出現している場合、がん細胞の増殖スピードが速く、治療への反応が乏しくなります。 トラスツズマブは、がん細胞の増殖を促進させる「HER2」に対して強力な阻害作用を持ちます(本ページ「効果のメカニズム」参照)。

本成分はHER2受容体に結合し免疫細胞を呼び寄せてがん細胞を殺す作用と、結合することにより補体という物質の力によってがん細胞を殺す作用の二つによって、「HER2」を過剰出現させているがん細胞のみを攻撃します。逆にいうと、トラスツズマブは「HER2」が過剰に出現している場合にしか使用することができません。

したがって、現在のところは「HER2」過剰出現が確認された乳がん、同じく「HER2」過剰出現が確認された治癒・切除不能な進行・再発胃がんにのみ適応があるとされています。

用法・用量

症状に応じ、適切な用法・用量で使用します。トラスツズマブには2種類の投与方法があり、乳がんの場合にはA法又はB法、胃がんの場合には他の抗がん剤との併用でB法を使用します。 A法:通常、成人に対して1日1回、初回投与時には4mg/㎏(体重)を、2回目以降は2mg/㎏を90分以上かけて1週間間隔で点滴静注します。 B法:通常、成人に対して1日1回、初回投与時には8mg/㎏(体重)を、2回目以降は6mg/㎏を90分以上かけて3週間間隔で点滴静注します。

効果のメカニズム

トラスツズマブは「HER2」という分子を標的にして働く分子標的薬という種類の薬。がん細胞の増殖に関与しているタンパク質を選択的に抑え込みます。抗体薬(モノクローナル抗体)と呼ばれるグループに属します。

他の薬・治療法との併用について

他の抗がん剤成分との相互作用が確認されている薬です。心不全等の心障害が現れやすいとされているので、特に注意が必要です。

考えられる副作用

トラスツズマブは多様な副作用が認められている薬剤なので、患者の状態に応じて慎重に投与することが望まれます。

重大な副作用

血液の異常白血球減少が4.2%、好中球減少が6.7%、血小板減少が1.9%、貧血が3.5%の頻度で認められています。

心障害 心不全が4.5%、心嚢液貯留が0.1%、心筋症が0.4%、不整脈が1.4%、徐脈が0.1%の頻度で報告されています。また、心原性ショック、肺浮腫、心膜炎が頻度不明で認められています。
インフュージョンリアクション 発熱、悪寒、悪心、嘔吐、疼痛、頭痛、めまい、発疹などのインフュージョンリアクション(急性輸液反応)が40%の頻度で認められています。また、インヒュージョンリアクションのうち、ショック、アナフィラキシー、肺障害等の重篤な副作用が発現し、死亡に至った例が報告されています。
間質性肺炎・肺障害 間質性肺炎が0.2%、肺炎が0.2%、急性呼吸促拍症候群が0.1%の頻度で認められています。また、肺線維症が頻度不明で認められています。
肝障害 肝不全が0.1%未満、黄疸が0.1%、肝炎が0.1%、肝障害が0.5%の頻度で認められています。
腎障害 腎不全が0.2%、腎障害が1%の頻度で認められています。
脳神経障害 脳血管障害が0.2%の頻度で認められています。また、昏睡、脳浮腫が頻度不明で認められています。
敗血症 敗血症が頻度不明で認められています。
腫瘍崩壊症候群 腫瘍崩壊症候群(破壊されたがん細胞による血液異常が引き起こす腎不全、多臓器不全などの緊急的疾患)が頻度不明で認められています。

その他の副作用

呼吸器呼吸困難/咳嗽/鼻出血/胸水/喘息/しゃっくり/咽喉頭疼痛/副鼻腔炎/気管支炎など

精神神経系 頭痛/めまい/味覚異常/感覚鈍麻/ニューロパチー/不眠症/不安/うつ病/思考異常など
消化器 悪心/嘔吐/下痢/食欲不振/口内炎/便秘/腹痛/消化不良/腸炎/口内乾燥/嚥下障害など
循環器 高血圧/低血圧/頻脈/動悸/熱感/リンパ浮腫など
皮膚 発疹/脱毛症/爪の障害/掻痒症/皮膚乾燥/蕁麻疹/皮膚炎/発汗/挫創/手掌・足底発赤知覚不全症候群/色素沈着障害など
肝臓 AST増加/ALT増加など
腎臓 排尿困難/腎クレアチニン・クリアランス減少/中毒性ネフロパシーなど
流涙増加/結膜炎/視力障害など
その他 発熱/悪寒/疲労/関節痛/筋肉痛/粘膜の炎症/体重減少/インフルエンザ様疾患/上気道感染/脱水/筋痙縮/末梢性浮腫/膀胱炎/尿路感染症/難聴/口腔カンジダ症/耳鳴/過敏症など

使用上の注意

禁忌

次の患者には投与しないでください。
  • 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者

慎重投与

次の患者には慎重に投与してください。
  • 重篤な心障害のある患者
  • アントラサイクリン系薬剤の前治療歴のある患者
  • 胸部への放射線を照射中の患者
  • 心不全症状のある患者又はその既往歴のある患者
  • 左室駆出率が低下している患者、コントロール不能な不整脈のある患者、臨床上重大な心臓弁膜症のある患者
  • 冠動脈疾患(心筋梗塞、狭心症等)の患者又はその既往歴のある患者
  • 高血圧症の患者又はその既往歴のある患者
  • 安静時呼吸困難(肺転移、循環器疾患等による)のある患者又はその既往歴のある患者

併用注意

次の薬との併用に注意してください。
  • アントラサイクリン系

高齢者への投与

高齢者に投与する場合は、次の点に注意してください。 一般に高齢者は生理機能が低下しているため、慎重な対応が必要です。特に心機能、肝・腎機能検査、血液検査を行なうなど患者の状態を観察しながら慎重に投与してください。

妊婦、産婦、授乳婦等への投与

妊婦、産婦、授乳婦等に投与する場合には、次の点に注意してください。 妊娠中の患者、または妊娠している可能性がある患者に対しては、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与してください。本剤を投与した妊婦に羊水過少が起きたとの報告があります。 また授乳中の女性においても、治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討してください。動物実験において、本成分の乳汁への移行が報告されています。

小児への投与

小児に投与する場合には、次の点に注意してください。 新生児や乳児、幼児、小児等への投与において、安全性は確立されていません(小児等を対象とした臨床試験は実施されていません)。

トラスツズマブを使用した人からの体験談

いたって普通の日常生活を送れました

通院の時間を取られる以外は、いたって普通の日常生活を送れました。副作用は、従来型の細胞毒系抗がん剤と比べ物にならないくらい軽いです。おそらく、ほとんどの方にいえるのではないかと思いますが、副作用(デメリット)に対して効果(メリット)がこれほど見込める抗がん剤はないのではないでしょうか。ただし、初回のみ要注意。心配な方は入院治療をお願いしたらいいと思います。

心機能の低下がみられたため中止しました

乳がんのステージⅡでトリプルポジティブでした。術後にEC療法(ファルモルビシンとエンドキサンの併用)を行ないましたが嘔吐、嘔気が激しく減量。その後に放射線治療を行ない、タキソテールとハーセプチンを3クール終了したところで心機能の低下と浮腫のため中止。タモキシフェン服用開始し、半年後に心機能が回復したためハーセプチンを再開しましたが、また心機能の低下がみられたため中止しました。

複数の副作用が出ています

パージェダ、ハーセプチン、エリブリンを使っていますが、投薬後数日間の胃もたれ、治療開始3週間程度で脱毛開始、口内炎、傷が治りにくいなどの副作用が出ています。気になるのは脱毛が髪の毛のみで、眉毛や他の毛が抜けている様子がないことです。髪の毛は、だいたい1日に両手いっぱいくらいの量が抜けています。

ひどい倦怠感と頭痛にみまわれました

ハーセプチン単独投与になれば副作用はないと思っていました。点滴から2日目、朝からどうしようもなく身体がだるく、頭痛もひどく起き上がれませんでした。痛み止めを飲んでおさまり、夕方にはだるさも取れました。4日目、目覚めると足腰がひどくだるく、起きても何もしたくありませんでした。やっぱりハーセプチンの副作用でしょうか?

まったく副作用はありませんでした

抗がん剤はパージェタ、ハーセプチン、ドセタキセルを使用しました。ハーセプチンはガタガタ寒気が出たり、心臓がバクバクしたりすると聞いていましたが、まったく何もありませんでした。私にとってはただの生理食塩水と変わらない感じでした。

足はパンパン、ピリピリ痛むのは副作用?

タキソールとハーセプチンの12回目投与から2週間以上経ちます。むくみはピーク時より引いてきましたが、まだ足はパンパンになりやすいです。筋肉痛も出ており、立ったり座ったりも重労働で外出もままなりません。しびれは少し楽になってきましたが、相変わらずピリピリ痛みます。もうひとつ気になるのは、胃あるいは食道がムカムカすることです(これは副作用じゃないかもしれませんけど)。

皮膚の痒みはハーセプチンの副作用のようです

タキソールとハーセプチンが始まってから、首、肘の裏、足に少し痒みがあったのは、どうやらハーセプチンの副作用のようです。大したことないまま過ぎてほしいですし、保湿だけで大丈夫ならいいのですが…

心臓に負担がかかっているのは確かなようです

ハーセプチンを投与してから胸がドキドキして、少し苦しい感じがしています。昨年末、FEC療法(5-FU、ファルモルビシン、エンドキサンの3剤併用)と一緒にハーセプチンを投与していた時も、入浴したり食事をしたりするとドキドキしていたので、ハーセプチン投与で心臓に多少負担がかかっているのは確かなようです。

副作用は手荒れ、爪がすぐ割れる、湿疹でした

ハーセプチンを3週間ごとに17回投与しましたが、手荒れ、爪がすぐ割れるといった副作用が出ました。13回目くらいに突然お腹に湿疹が出て、その後ハーセプチンを投与するたびに悪化するので副作用と判断、投与終了後に完治しました。初回投与の時に熱が出るかもと言われていましたが、私は大丈夫でした。

不整脈と高血圧で治療が延期に

不整脈のためハーセプチンを延期していましたが、心電図検査では不整脈が改善されておらず、血圧も170台になってしまい、また延期になりました。循環器科でハーセプチンを続けられるかどうか検査してもらって、もしダメなら不整脈と高血圧の治療開始です。主治医によると副作用の高血圧は1~2%、心臓の障害は2~4%だそうですが、そんな低い割合の中に入ってしまったのでしょうか。病気の治療で副作用が出て、その副作用のためにまた薬を飲んで、薬の連鎖みたいで何だかなぁと思います。

胸がずっと重苦しい

ハーセプチンを投与していますが、ここ10日間くらいずっと胸が重苦しいです。圧迫感があり、何だか息苦しく、食道に何か詰まっているような感じです。日常生活に支障はないのですが、起きている時だけ常にずーんと重苦しいのです。苦しくて横になったことも一度だけあります。他には、手の指先が常に荒れて痛い、視力の低下、腰が痛い、左ひじが痛い、頭痛、鼻の粘膜が膿んで痛いなどがありますが、やっぱりハーセプチンの副作用でしょうか。

副作用で粘膜が弱くなっているのが難儀

私がハーセプチンでいちばん難儀だと思っている副作用は、粘膜が弱くなっていることです。日常的にわかりやすいのは鼻の穴で、なぜか右側だけなのですが、鼻をかむたびに血かかさぶたが混じって出てきます。鼻をタオルやハンカチで押さえるだけで血がついてしまうことも。もともとの抗がん剤治療で鼻毛が抜けているので、弱っている鼻の粘膜がやられてしまったのでしょうね。

とても疲れる、気力が出ない

ハーセプチン投与の9回目で半分が終わったところです。副作用は確かに穏やかですが、この頃とても疲れて気力が出ません。先生や看護師さんに聞いてみましたが、副作用ということなら仕方ありません、OKです。疲れたら無理しないで休みます。抗がん剤が身体に100のダメージを与えるとしたら、ハーセプチンは身体にどのくらいのダメージを与えるのでしょうか…

参照文献・URL

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