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トレチノイン

ここでは、急性前骨髄球性白血病の治療に用いられる、分子標的薬「トレチノイン」の特徴や副作用をはじめ、服用上の注意や実際に服用された方の体験談などをご紹介します。

トレチノインの概要

一般名称 トレチノイン:カプセル
形状 カプセル
分類 分子標的薬
商品名(製造元) ベサノイドカプセル10mg(富士製薬工業株式会社)
薬価 667.2円/錠
適応する症状
  • 急性前骨髄球性白血病

トレチノインの特徴

トレチノインは、急性前骨髄球性白血病の治療に用いられている抗がん剤。白血病細胞の増殖を抑制し、分化を正常化させる効果をもつため、急性前骨髄球白血病の第一選択薬として用いられています。

トレチノインは、レチノイン酸というビタミンA誘導体です。レチノイン酸は1955年にアメリカで作り出された成分で、主にシワやシミ、ニキビなど、美容医療にも用いられています。1980年代以降、レチノイン酸のもつ白血病細胞の増殖を抑える働きが明らかになり、急性前骨髄球性白血病の治療薬として用いられるようになりました。日本では1995年から認可された治療薬です。

ただし、日本国内においては、急性前骨髄球性白血病以外にトレチノインを用いることはできません。

用法・用量

年齢や症状により、適宜用量を増減しながら用います。成人の寛解導入療法として用いる場合には、トレチノイン60~80mg/日(45mg/m2)を3回に分けて食後に経口服用します。

ただし、成人であっても、妊娠中や授乳中の女性の場合、胎児や乳児への影響が確認されているため、服用は禁忌とされています

また、低出生体重児や新生児、乳幼児を含む小児の服用は、安全性が明らかになっていないため、服用する際には細心の注意が必要となります。

効果のメカニズム

トレチノインは「PML-RARα」という分子を標的にして作用する「分子標的薬」です。分子標的薬とは、がん細胞特有の分子を標的にして攻撃し、正常な細胞には攻撃しない特徴をもった治療薬を指します。

トレチノインもその一種であり、レチノイン酸というビタミンA誘導体の働きにより、未成熟な白血病細胞を正常な成熟白血球に誘導することで、白血病細胞の増殖を抑制します。このような治療メカニズムから、トレチノインを用いた抗がん剤療法は「分化誘導療法」と呼ばれています。

他にも、乳がんに用いられるハーセプチン、悪性リンパ腫に用いられるリツキサン、慢性骨髄性白血病に用いられるグリベック、肺がんに用いられるイレッサなどが同じ種類の治療薬として挙げられ、近年のがん化学療法において重要な役割を担っているといえます。

他の薬・治療法との併用について

トレチノインと併用が禁じられている薬としては、ビタミンA製剤(チョコラAなど)が挙げられます。これは、トレチノインがビタミンA誘導体であることに起因しており、両者を併用してしまうと、ビタミンA過剰症を引き起こし、重篤な副作用のリスクが高くなるためです。また、フェニトイン(抗けいれん薬)やイトラコナゾール(抗真菌薬)、トラネキサム酸などの併用にも注意が必要です。

トレチノイン単体でも急性前骨髄球性白血病に対する治療効果は十分ですが、他の抗がん剤と併用して用いることにより、よりよい効果がもたらされる場合もあります。

トレチノインとの併用されることが多い抗がん剤としては、キロサイド、イダマイシン、ダウノマイシン、テラルビシン、アクラシノン、ノバントロンなどが挙げられます。

考えられる副作用

トレチノインは、他の抗がん薬と同様に人により程度の違いはありますが、副作用が現れる場合があります。

口唇の乾燥や、肌荒れなど軽い副作用であれば治療が優先されますが、レチノイン酸症候群と呼ばれるような重篤な副作用の場合もあるため、異常や不安を感じるようであれば、すぐに医師に相談し、適切な処置のもとで用いることが重要です。

重大な副作用

血管炎発現頻度は不明ですが、足のしびれや痛み・青あざなどが現れます。症状がみられた場合には、減量や休薬などの対処が必要です。肝障害発熱(38℃以上)・体のかゆみ・黄疸・食欲不振・吐き気・嘔吐・腹痛・発疹などの症状がみられます。

中毒性表皮壊死融解症(TEN)発熱(38℃以上)・目の充血・口唇のただれ・のどの痛み・広い範囲での紅斑などの症状がみられ、それが持続したり、悪化したりします。多形紅斑かゆみや痛み、熱感を伴う赤くてまだら模様の発疹や水疱が全身にみられます。

レチノイン酸症候群 ビタミンA誘導体の治療薬に特徴的な副作用。約12%の発現が確認されており、発熱・呼吸困難・胸水貯留・肺機能異常・多臓器不全などの症状がみられます。このような症状がみられた場合には、トレチノインの服用を中止し、副腎皮質ホルモン剤を用いたパルス療法など適切な処置が必要です。
白血球増多症 約5%の発現が確認されています。強い倦怠感・めまい・立ちくらみ・息切れなどの症状が現れます。 末梢白血球数が30,000/mm3超の場合には、減量や休薬などの対処が必要です。
血栓症 約0.4%の発現が確認されています。手足(特にふくらはぎ)の痛み・浮腫・しびれ・息切れや息苦しさ・眼の異常・頭痛・片側性まひ・ろれつが回らない・意識障害などが現れます。
錯乱 発現頻度は不明ですが、意味不明な言動や混乱した状態がみられた場合には、減量や休薬などの対処が必要です。
感染症 発現頻度は不明ですが、肺炎や敗血症などの感染症が確認されています。症状がある場合には、減量や休薬などの対処が必要です。
肺梗塞 血の混じった痰・胸の痛み・息苦しさなどがみられます。
過骨症 関節の痛みや骨の痛みがみられ、骨端の早期閉鎖の可能性もあります。

その他の副作用

脂質代謝トリグリセライド上昇・総コレステロール上昇・β-リポ蛋白上昇など

呼吸器 鼻充血・ラ音・喘鳴・咽頭炎など
皮膚 発汗・皮膚出血・皮膚剥離・発疹・紅斑・性器潰瘍・皮膚炎・ペニス背面乾燥・皮膚発赤・掻痒・脱毛・好中球浸潤・有痛性紅斑・発熱を伴う皮膚障害(sweet症候群)・結節性紅斑など
粘膜 口唇乾燥・口内炎・粘膜乾燥・口腔粘膜びらんなど
肝臓 ALT(GPT)/AST(GOT)/LDH/Al-Pの上昇など
精神・神経 うつ症状・視覚障害・聴覚障害・頭痛・頭蓋内圧亢進(うっ血乳頭/頭痛/悪心/嘔吐/視覚異常などの初期症状あり)・めまい・不安・眠気・末梢知覚異常など
消化器 便秘・口内水疱・胃不調・膵炎・嘔吐・悪心・食欲不振・下痢・腹痛など
骨・筋肉 骨格筋痛・筋炎・筋肉痛・骨痛・関節痛・背部痛など
乾燥・痒みなど
腎臓 BUN上昇・クレアチニン上昇など
電解質異常 カリウム上昇・ナトリウム低下・クロール低下・高カルシウム血症など
その他 発熱・悪寒・疲労感・体重変動・全身の脱力感・不整脈・蜂巣炎・アルブミン減少・血小板増多・尿蛋白・尿沈渣・浮腫・胸痛など

使用上の注意

禁忌

次の患者には投与しないでください。
  • 妊娠又はその可能性のある女性患者(胎児奇形のリスクがあるため)
  • 既往歴に本剤の成分による過敏症がある患者
  • 肝障害のある患者(類似化合物エトレチナートにより、重篤な肝障害のリスクがあるため)
  • 腎障害のある患者(類似化合物エトレチナートにより、重篤な腎障害のリスクがあるため)
  • ビタミンA製剤を投与している患者(ビタミンA過剰症の様な副作用症状のリスクがあるため)
  • ビタミンA過剰症の患者(ビタミンA過剰症が増悪するリスクがあるため)

慎重投与

次の患者には慎重に投与してください。
  • 25歳以下の患者(特に幼児・小児)
  • 低出生体重児・新生児・乳児
  • 糖尿病や肥満・アルコール中毒症・脂質代謝異常など、高トリグリセライド血症のリスクがある患者
  • 高齢者

併用禁忌

次の薬との併用をしないでください。
  • ビタミンA製剤(ビタミンA過剰症による皮膚の剥離や食欲不振などの副作用発現リスクがあるため)

併用注意

次の薬との併用に注意してください。
  • フェニトイン(作用が増強され、血中のフェニトイン濃度が高くなってしまうため)
  • トラネキサム酸(血栓症のリスクが高まるため)
  • アプロチニン製剤(血栓症のリスクが高まるため)
  • フルコナゾール(トレチノインの作用を増強させるリスクがあるため)
  • イトラコナゾール(トレチノインの作用を増強させるリスクがあるため)
  • ボリコナゾール(トレチノインの作用を増強させるリスクがあるため)

高齢者への投与

トレチノインは、血漿タンパクとの結合性が強いため、血漿アルブミンが減少していることが多い高齢者への投与にあたっては、用量に注意が必要です。 定期的な血漿アルブミン検査を実施しながら、慎重に投与しなければなりません。

妊婦、産婦、授乳婦等への投与

催奇形作用(胎児に奇形が生じる)が報告されているため、妊娠中のトレチノイン服用は禁忌です。

また、妊娠の可能性がある患者への投与に際しては、投与しないことが原則ではあるものの、やむを得ず投与する場合、投与前の少なくとも1カ月間と、投与中及び投与終了後少なくとも1カ月間は必ず避妊することを前提とする必要があり、あわせて生理周期の把握や定期的な妊娠検査を実施することとされています。

授乳婦の場合には、母乳中への類似化合物(エトレチナート)移行が報告されているため、授乳は避けなければなりません。

小児への投与

低出生体重児や新生児、乳幼児、小児への投薬は安全性が確立されていないため、患者の観察を十分に行ったうえで、慎重に投与しなければなりません。トレチノインの類似化合物(エトレチナート)により、過骨症や骨端の早期閉鎖のリスクが報告されているため、関節や骨の痛みなどを注意深く観察する必要があります。

トレチノインを使用した人からの体験談

うつ症状が辛かった

以前から、服用の際に気分の落ち込みなどがありましたが、8クール目の服用の時に、うつ症状が辛くて参ってしまいました。しかし、トレチノイン(ベサノイドカプセル)の副作用としてきちんと文書にも書かれていることですので、「薬のせいなんだ」と理解できるだけで症状の辛さもだいぶ軽減されます。辛さをきちんと主治医に話すことも大切だと思いますよ。

粘膜障害が起こりました

抗がん剤といえば吐き気のイメージがありますが、今は吐き気止めもよく効くものがあるのでその辛さはありませんでした。それ以上に、副作用による口や肛門の粘膜障害が大変でした。唾液を飲み込むのすら痛く、肛門も朝から晩までの激痛が走っていたのが辛かったです。

副作用で考えがまとめられない時が…

トレチノイン(ベサノイドカプセル)を服用中、どうにも考えがまとめられないといった症状がありました。欲しいものがあってもいざお店に行くと迷ってしまい、迷った挙句何も買わずに戻るといったことが何度もありました。今はトレチノイン(ベサノイドカプセル)を服用しておらず、こうした症状はみられないので、副作用の一種だったと思います。

比較的副作用は軽めだと感じました

レチノイン酸系のトレチノイン(ベサノイドカプセル)など、分化誘導療法が使えるのは急性前骨髄球性白血病のみ。通常の抗がん剤に比べて、私個人的には副作用が軽く感じます。そのため、体力の消耗を抑えつつ治療できるのがうれしいです。

トレチノイン(ベサノイドカプセル)だけ副作用が…

維持療法で、3カ月に1回、2週間のトレチノイン(ベサノイドカプセル)服用をしています。他の薬ではここまでの副作用は出ていないのですが、トレチノイン(ベサノイドカプセル)だけは服用している期間の副作用で体が辛く、寝ていることが多いです。

肝機能値が上昇

維持療法でトレチノイン(ベサノイドカプセル)を服用しています。メソトレキセートという薬と合わせて服用すると次の日がとても辛いです。副作用で肝機能の数値が上がってしまい、ウルソも服用することになりました。

副作用で頭痛があります

私の場合は、トレチノイン(ベサノイドカプセル)の副作用で、頭痛があります。さらに、頭痛から肩こりが始まり、背中や腰までダルさがでることもあります。

トレチノイン(ベサノイドカプセル)→アムノレイクに変更

トレチノイン(ベサノイドカプセル)が合わないのか、服用すると肺に水が溜まり、重篤な副作用が出てしまいます。そのため、主治医と相談の上アムノレイクという治療薬に変更しました。服用するたびに発熱はありますが、)トレチノイン(ベサノイドカプセル)の時よりは副作用は軽度です。ただし、)トレチノイン(ベサノイドカプセル)に比べ、常備している病院が少ないのが現状の様です。また、25歳以下で使用できないという点がデメリットかと思われます。

参照文献・URL

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