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抗がん剤の効果とその役割を知る

副作用が生じるとわかっているのに抗がん剤治療が続けられているのはなぜなのか。改めて抗がん剤の効果や役割、意外な抗がん剤開発の歴史や最新の治療情報など徹底的に調べました。

そもそも抗がん剤はなぜがんに効くのか

抗がん剤による化学療法は、外科手術、放射線療法とともに「がんの三大療法」として、がん治療の基本を支えています。しかし、抗がん剤ががんに効く仕組みや、治療に抗がん剤を使う理由について、きちんと理解できている人は意外に少ないのではないでしょうか。

そもそも抗がん剤とはどのような薬なのでしょう。なぜがんに効くのでしょうか。副作用が起きるにもかかわらず、抗がん剤治療を選択するのはどうしてでしょうか。ここでは、抗がん剤が生まれた歴史とその進歩、期待される効果、抗がん剤治療の最前線など、抗がん剤についての基礎知識や、最新の研究結果など、気になる情報をまとめて紹介します。

抗がん剤開発と進歩の歴史

戦時中の化学兵器から生まれた治療への新しい道

抗がん剤治療の始まりは、1940年代半ばにさかのぼります。第二次世界大戦中、「マスタードガス」という毒ガス兵器によって被爆した兵士たちに、血圧低下や白血球減少などの症状が見られることがわかりました。

医学者たちは彼らの治療に手を尽くす一方で、ガスの成分である「ナイトロジェンマスタード」という物質が、放射線のように、細胞に突然変異を起こしている可能性が高いことに注目します。そして、それを逆手にとり、「放射線と同じ効果をもたらす薬」が作れるのではないかと考えました。

当時、がんの治療には外科手術か放射線療法しか方法がありませんでした。その二つでは白血病や悪性リンパ腫のように、体の広範囲に影響をおよぼすタイプのがんを治療できなかったのです。狭い範囲にも体全体にも「自由に使える薬」でがんを治せたらどんなにいいか。こうした願いから生まれた「抗がん剤」は、がん治療に新しい道を開くこととなりました。

新薬、新しい治療法の登場で劇的な進化を遂げたがん治療

いったん研究が始まると、抗がん剤は瞬く間に発展をとげました。シクロホスファミドを始めとする、ナイトロジェンマスタード由来の「アルキル化剤」を皮切りに、1960年前後には、「代謝拮抗剤」(フルオロウラシルなど)、「微小管阻害剤」(ビンブラスチンなど)が次々と登場。1970年代には「プラチナ製剤」(シスプラチンなど)が加わり、現在も抗がん剤治療の中心で活躍する抗がん剤は、ほとんどこの時期に出そろいました。

1980年代に入ると、「免疫細胞治療」という新しいタイプの薬剤の研究が始まります。免疫細胞療法は、それまでの「細胞障害性抗がん剤」(DNAの増殖を抑えてがん細胞をなくす薬)とは違い、体の免疫力を上げてがん細胞への攻撃を強化する薬剤です。このタイプの抗がん剤は「免疫調整剤」とよばれ、インターフェロンやウベニメクスなどが知られています。

夢の新薬はいつできる?抗がん剤開発は分子標的薬へとシフト

そして1990年代後半、“副作用のない抗がん剤”として「分子標的薬」が登場しました。従来の抗がん剤との大きな違いは、がん細胞に含まれるタンパク質や遺伝子をピンポイントで攻撃するため正常な細胞に対するダメージが少なく、より効率良くがんに効果を発揮することです。

残念ながらこの抗がん剤でも特有の副作用が起きることがわかっていますが、従来の抗がん剤に比べ、患者さんへの負担はかなり軽減されるようになりました。イマニチブ、トラスツズマブなど数十種類がすでに臨床現場で使われており、目下、研究中の抗がん剤は分子標的薬が中心だといわれています。

今後は、ターゲットとなる物質をより正確に狙い撃ちすることで効果を高め、副作用を限りなくゼロに近づけた夢の新薬を目指して、研究が進められるということです。

抗がん剤治療の効果とその役割とは

抗がん剤ががんに効く仕組みは3パターン

がんとは、正常な細胞の遺伝子が何らかの原因で傷つくことで、無制限に増殖する「がん細胞」に変わり、周囲の健康な組織を浸食して体をむしばむ悪性腫瘍を作るものです。一般的にはこの悪性腫瘍そのものを「がん」と言うことが多いです。

抗がん剤の目的は「がん細胞を死滅させること」。研究の過程でそのための方法がいくつも試みられましたが、現在主流となっているのは以下の3つになります。

【がん細胞の分裂を阻害する】

もっとも多くの抗がん剤で採用されている方法。DNAがコピーされるのを邪魔して細胞分裂を失敗・消滅させる。「細胞障害性抗がん剤」のほとんどがこれにあたる。

【がん細胞そのものを攻撃する】

「分子標的治療薬」と一部の「細胞障害性抗がん剤」ががん細胞を攻撃する方法。前者はがん細胞だけに含まれる特定の物質をターゲットに、後者はがん細胞(実質的には異常な細胞分裂を繰り返す細胞)のDNAをターゲットにする。

【体の免疫力を高めることでがん細胞を破壊する】

「免疫細胞治療」で使われる免疫調整剤が、がん細胞を死滅させる方法。薬そのものでがんを叩くのではなく、体内の免疫作用を高め、リンパ球の一部を活性化させることで、体が自分でがん細胞を排除する手助けをする。

抗がん剤はがん治療に欠かせない“名脇役”

抗がん剤の最大の特長は、がんを患っている局部にも、体全体に散らばったがんにも薬を届けることができ、外科手術や放射線療法では対応できないがんに効果を発揮することです。他の療法と組み合わせることや、複数の抗がん剤を同時に使うことで、治療効果を高められるという利点もあります。

外科手術や放射線療法で治せなかった患者さんの延命にしか使われていなかった時代もある抗がん剤ですが、現在では治療に欠かせない“名脇役”として、医療の最前線でがんと戦っています。

抗がん剤治療の主な役割は以下のようになります。

【術前化学療法】

外科手術の前に抗がん剤を投与することでがんを小さくし、手術で切除する範囲が少なくて済むようにする治療法。体内の微小ながん細胞を少しでも早く体の中から排除することができる。

【術後化学療法】

外科手術でがんを摘出したあと、手術では取り切れなかった微小ながん細胞を抗がん剤で叩いて再発を抑える治療法。一般的にはこちらのケースが多い。

【遠隔転移に対する化学療法】

他の組織に転移が起こったがんに対しての治療およびその進行を抑えることために行われる療法。

抗がん剤がどんなに進化を遂げても限界がある?

抗がん剤の発達は、がん治療を大きく変えました。昭和の時代、がんは死の宣告と同じでしたが、抗がん剤の進歩や抗がん剤治療の発展により、がんは治すことができるもの、延命が可能なものという認識に変わってきました。

新しい抗がん剤が次々と開発されてはいますが、がんの種別や進行状況により、効くがん、効かないがんがあることも事実です。治せる可能性があれば治癒を、治せないがんなら延命を目的に治療を行います。

【抗がん剤で治癒可能ながん】

急性骨髄性白血病/急性リンパ性白血病/悪性リンパ腫/精巣がん/胚細胞腫瘍/卵巣がん/絨毛がん/小細胞肺がんなど

【延命を目的として治療するがん】

頭頸部がん/食道がん/非小細胞肺がん/乳がん/胃がん/大腸がん/膵臓がん/膀胱がん/子宮がん/悪性黒色腫/軟部組織腫瘍など

最先端のがん治療とその有効性

あらゆるがんに対抗できるNK細胞療法

最先端の免疫療法として、いま、NK(ナチュラルキラー)細胞を使った免疫療法が話題になっています。

従来の免疫療法は、免疫細胞の大半を占め、中心となって働く「T細胞」というリンパ球にがん細胞を攻撃させていましたが、T細胞は通常の状態ではがん細胞を”敵”と認識しないため、免疫調節剤という薬を使ってがんを攻撃するよう指令を出す必要がありました。

しかし、NK細胞は「生まれつき(natural)の殺し屋(killer)」という名の通り、体内の異物に対して常に活性化しており、何もしなくてもがん細胞を自動的に攻撃してくれるのです。

治療は、血液から自己のリンパ球を採取し、2~4週間かけてNK細胞を増殖させた後、点滴で体内に戻すという流れで行われます。自分の細胞を使った療法なので重篤な副作用はほとんどなく、がんの種類を選びません。単体療法としてよりも、他の治療法と組み合わせることで治療の効果を高める補助的な療法として期待されています。

がん治療の概念を変える免疫チェックポイント阻害剤とは?

免疫療法の分野で世界中が注目している新薬があります。それが「免疫チェックポイント阻害剤」です。免疫チェックポイント阻害剤は分子標的治療薬の一種で、2014年、ニボルマブ(商品名:オプジーポ)という薬が、悪性黒色腫の治療薬として、世界で初めて日本で承認されました。

体内の免疫細胞はつねに病原菌やがん細胞と戦っていますが、その力が強すぎると健康な細胞まで標的にしてしまう危険もあります。そのため、免疫細胞の表面にはブレーキをかけるスイッチとなる「チェックポイント」があり、それをこまめに切り替えることで免疫のバランスをとっています。ところが、がん細胞はこの機能を逆手にとって、勝手に免疫細胞の働きを抑制してしまうのです。チェックポイント阻害剤は、こうしたがん細胞の“いたずら”を防ぎ、ブレーキを外して免疫細胞を再び活性化させるはたらきをもっています。

チェックポイント阻害剤が効くがんはまだまだ増えると考えられていて、いまも世界中で臨床試験が続けられています。

抗がん剤の効果がない!? という衝撃の調査結果

進行度の高い高齢患者には効果ナシ?治療が負担になる場合も

抗がん剤は、効くがん・効かないがんがあるだけでなく、年齢やステージ(がんの進行度)によって、ほとんど効果がない場合もあります。2017年4月、政府と国立がん研究センターが、高齢のがん患者に対する抗がん剤治療について「延命効果が少ない可能性がある」という調査結果をまとめたことがわかりました。

(出典:産経ニュース http://www.sankei.com/politics/news/170427/plt1704270012-n1.html)

主に肺がん・大腸がん・乳がんでステージⅣ(がんがもっとも進行している状態)の高齢患者の場合、抗がん剤治療の有無にかかわらず生存率は同じで、抗がん剤治療はあまり効果がない可能性があるというのです。

抗がん剤治療はすべての患者さんに対して行われるものではありません。薬が体を治療する力より、副作用で受けるダメージのほうが大きい場合、治療が負担となって、かえって状態を悪化させてしまうこともあるからです。

抗がん剤の効果と副作用のバランスこそがカギを握る

「抗がん剤が患者を殺す」といったセンセーショナルな文言を掲げる記事もありますが、それは、副作用を無視し抗がん剤の大量投与をするような医療に対してのアンチテーゼだと思います。実際は、そのようなおかしな治療を行う病院はありません。仮に治療方針に不安や疑問を感じるようであれば、思い切ってほかの病院のセカンドオピニオン外来を受けにいくとよいと思います。

がん治療を経験した身としては、治癒の可能性があるならば、支持療法のサポートを受けながら、的確な化学療法を受けるべきだと考えています。どのくらいの効果があるかは、個人差もあるので、実際に投与してみなければわかりません。しかし、抗がん剤のデメリットだけを見て敬遠し、治る可能性を最初から捨ててしまうことこそ「患者を殺す」行為なのではないでしょうか。

がん治療でもっとも重視されるのはQOLを向上させること

がん治療の目的は、必ずしもがんを治癒することに限りません。近代医療では、病気からくる障害や苦痛を取り除き、QOL(quality of lifeの略)と呼ばれる「生活の質」を向上させることは治療と表裏一体であり、がんの治療でもそれがもっとも重視されています。

入院後すぐ、積極的な治療に取りかかることもあれば、外科手術や化学療法はせず、最初から緩和ケアに重点をおいた治療を行うこともあります。病気が治癒し健康になることも、広義の意味でQOLの向上であると考えれば、がん治療の目的はQOLを向上させることともいえるでしょう。

患者さんの状態を見ながら無理のない治療計画を立て、経過をみながら注意深く治療を進める必要があります。治療には最適なタイミングというものがあり、すぐに外科手術ができない場合もあります。途中で状態が悪くなったら、中断や療法の変更、緩和ケアへの切り替えなど柔軟に対応していくのが理想のがん治療であり、実際多く現場では、このようなきめ細やかな対応が行われています。

がん治療の研究は日進月歩

抗がん剤による治療には限界があります。しかし、新薬や新しい治療法の研究は、いま世界中で続けられています。遺伝子検査によって、かかりやすいがんを発見したり、効果の高い抗がん剤を絞り込んだりする研究も進んでいます。

まだ一般的とはいえませんが、生体リズムに着目し、骨髄細胞の分裂が沈静化する夜中に抗がん剤を使うことで副作用を軽減する「クロノテラピー」という一風変わった治療法も提案されています。

がん治療の研究は日進月歩。いまの医学では手の施しようがないようながんでも、近い将来、新たな薬や治療の選択肢がきっとできるはずです。

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