分子標的薬

2017年現在、世界で最も使われている抗がん剤「分子標的薬(ぶんしひょうてきやく)」について薬の特徴やがん細胞に働きかける仕組み、副作用について解説します。

新しいタイプの抗がん剤・分子標的薬

分子標的薬は比較的新しい治療薬で、1990年代の後半からがん治療に活用されています。従来の抗がん剤は、健康な細胞を含めた不特定多数の細胞をターゲットとしていましたが、分子標的薬はがん細胞の表面にある酵素たんぱくや遺伝子など、「がん細胞特有の分子を標的にする」という大きな違いがあります。

つまり、悪さをする細胞だけを抑え、がん細胞の増殖や転移を防ぐというのが狙いです。

一番の特徴は、正常な細胞にダメージを与えるリスクが軽減されるため、副作用が比較的軽度になること。本来、入院が必要となる場合でも通院治療や在宅治療で済むようになり、生活の質を落とすことなく治療できるケースも少なくありません。

今では、世界中で研究されている抗がん剤のほとんどが分子標的薬に該当し、すでに10種類以上の分子標的薬ががん治療に導入されています。

分子標的薬の種類とそれぞれの効果

副作用は他の抗がん剤と併用することでより効果が高まることが明らかになっています。また、分子標的薬は薬物ごとにターゲットとするがん細胞の標的分子が異なるため、副作用も異なります。

分子標的薬の種類 効果
アービタックス 手術不可能な進行型・再発型の大腸がんに使用される。
アバスチン 世界初の血管新生阻害薬。手術不可能な進行型・再発型の大腸がん、非小細胞肺がんに適応。
アフィニトール 手術不可能もしくは転移した腎細胞がんに使用される。
アムノレイク 白血病のなかでも特殊な急性前骨髄球性白血病に使用される。
イレッサ 世界に先駆けて日本で承認された。非小細胞肺がんに有効だが、安全性が十分に確認されないまま使われたこともあり、重篤な副作用による死亡例が相次いだ。
グリベック 慢性骨髄性白血病、消化管間質腫瘍、急性リンパ性白血病として承認されている。
スーテント 腎細胞がんに使用。
スプリセル 慢性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病の治療に承認された薬剤。第1治療にはグリベックが推奨されており、スプリセルは第2治療薬として扱われている。
ゼヴァリン 難治性の悪性リンパ腫に使用。
タイケルブ 乳がん治療で初めてとなる経口薬。
ハーセプチン HER2陽性の乳がんに対して使用される。
ベサノイド 急性前骨髄球性白血病に対して使われる。

分子標的薬の副作用

従来の抗がん剤よりも副作用が軽度と言われていますが、分子標的薬特有の副作用があり、なかには重大な副作用により命を落としている方もいます。何事にも言えることですが、リスクはゼロではないということを理解しておきましょう。

例えば、以下のような副作用が報告されています。

分子標的薬の種類 副作用
アービタックス 大腸がんの抗がん剤として使用。投与した人の94%にニキビなどのようなものができる皮膚障害が報告されています。
アバスチン 肺がん治療に使用。高血圧、鼻出血、喀血などの副作用が多く、なかでも高血圧は投与した人の約50%に現れると言われています。
イレッサ 肺がん治療に使用。間質性肺炎という重大な副作用があり、死亡例が相次いで報告されました。

必ずしも万能ではないことを理解しましょう

分子標的薬は従来の抗ガン剤よりも治療効果が高く副作用も少ないと言われていますが、必ずしも皆が皆、効果を得られるわけではありません。場合によっては命を失う副作用があるということも理解しておく必要があります。

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